エアガンのホップパッキンの考察
なんとなく投稿します。僕が一番最初にカスタムを始める時に分析した事を書こうかな思います。電動ガンを弄る前はマルイの銃を”おもちゃ屋のおもちゃ”と思っていました。それは今でも変わりませんがホップシステムだけは知らべて実験していくうちに流体力学とエラストマー技術をよく理解した上で作られたシステムだと理解するようになりました。
流れ作業で作られる(、、と思われる)プロダクトですが誰が組んでも(それなりの経験が要りますが、、)それなりの飛距離と命中精度が出るこのシステムはとても理にかなっておりコストも抑えられて今の海外メーカーでもまだまだ追いついていないと感じます。
それでは僕がホップパッキンについて思ったことを書いていこうと思います。
上の画像はマルイのノーマルパッキンです。
そのままの状態で光(蛍光灯など)をパッキンの穴に当てて覗くと画像のようなホップが掛かる突起が見えますね、、、、この状態ではゴムはどこにもストレスを受けてないです。
、、、、このパッキンをバレルに納めると、、、、
、、、、、こんな感じになりますね。
ここでひとつマルイのチャンバーシステムで優れたところが判ります。
バレルに組まれる前のパッキンの突起が平らですがバレルに組まれて押しゴムで押されると突起は平らからカマボコ型になります。これは何が優れているかというと、、、、
適当にホップパッキンをバレルに嵌めてチャンバーに突っ込んでしまってパッキンが突っ張ったまま組み立ててしまっても画像のように綺麗なカマボコ型の点ホップの突起になります。
エラストマー技術で専門的に言うと体積弾性率、剛性率、ポワゾン比の定数がバレルに組み込まれる前は一定ですがバレルに組み込まれて押しゴムで押されるとその定数(バランス)が変わります。
これはいかにうまく慎重にバレルにパッキンを組み込んだとしても少なからず発生します。
パッキンがホスピタルグレード(後で説明します)でとても高度な成型技術で組まれたパッキンですとこれらの定数はとても優秀で実際にチャンバー内の圧力が上がったときでも定数の乱れも少なくホップの突起のセンターを保持し続けますが残念ながらマルイのパッキンはそんな技術で作られれているものではないので(また、チャンバー内の平滑度もよくはない、、)チャンバーに組まれた時点で各定数は大きくずれ込みます、、これはすなわちBB弾が当たる突起の位置のセンターが普通はズレますがマルイのこのパッキン突起形状ですとセンターは適当に組んでもセンターにくるように上手く設計されています!、、、これはとても良い設計だと思いました(点ホップなんで出来た芸当ですが、、)。
各定数(特にエアーの圧縮が掛かったときのヤング率)が大幅に乱れていても一点しかBB弾に触れないので安定した縦軸ジャイロがBB弾に掛けられる仕組みですね。
これが長掛けホップや、二点タイプ(PDIのWホールドパッキンなど)と各定数の乱れはそのままホップ突起のセンターずれに繋がります。しかも長掛け面ホップの突起はBB弾の縦軸方向の回転向きを決める要素が強いのでモロに弾道に影響を与えます(他にも沢山ありますが今日はここまで)。
、、マルイのパッキンは成型技術、品質そのものは中華の優秀なメーカーのパッキンとさほど変わりませんがその形状や純正チャンバーとの綿密な相性で他のチャンバーシステムよりも一歩リードしていると感じます。
、、次に実際にBB弾をチャンバーにセットしてみます。
ちょっと画像ではBB弾が小さすぎますがご勘弁を(押しゴムも巨大に書いています)、、。
画像ではそのBB弾にかかる応力とBB弾がホップ突起を抜けるときの空気の抜ける方向を判りやすく説明する為にちょっと極端に書いています。本当はノズルがセンターを保持するのでBB弾はもっとバレルのセンターに来ます。
この状態がBB弾発射前の状態ですね。
ここからトリガーを引いてピストンが引かれて開放!、、、、チャンバー内にエアーの圧力が高まって空気が流れ始めます。ピストンが加速始めは緩やかなスピードでエアーが流体となってBB弾とバレルの間をすり抜けます。このときはエアーのコンプレッションは低いのでエアーは流体として扱われます。
ここから徐々にピストンが加速していきエアーはBB弾の間をすり抜ける流量よりもノズルから大量にくるエアーの流量が大きくなりエアーはチャンバー内で流体から固体の特性になっていきます。
マルイのよいところは他のチャンバーシステムと違ってエアーが流体から固体の性質に変化する量が少ないうちにチャンバーからBB弾を発射させてチャンバー内のホップシステムのアライメント変化を最小に抑えることを第一に考えた設計ですね!
、、、では何故、エアーが固体の性質になる前にBB弾がチャンバーから抜けるのでしょうか?
、、、これは上の図の”A”と”B"の矢印に注目すると判ります。
ホップリブとBB弾上支点AのホップリブとBB弾が接触している面積はどのホップシステムよりも少ない(点ホップなので)ので端的に説明するとエアーコンプレッションがちょっとでも掛かるとリブが支えられなくなりBB弾が前に(ハイダー側に)行きます。BB弾の下支点BはAと違ってインナーバレルの表面なので下支点とBB弾との設置面積はAの何十分の一、しかもマテリアルは互いに硬いので摩擦係数の関係でAよりもBのほうが早く前に移動し始めます。
これが電動ガンカスタムでよく使われる”抜弾抵抗”と表現されている意味と同じかも知れないですね(僕はこの用語の意味は恥ずかしならば判りません。エアガン特有の技術用語なのでしょうか?)。
★★摩擦係数についてピンとこない方はこちらのサイトをご参考にしてみてください。
http://www.geocities.jp/origin_manhole/page030.html
、、、このようにAとBの摩擦係数の差がホップ回転なりホップダイヤルを強めるとAの摩擦係数が変化し(厳密に言うとBの摩擦係数も少し変化します)エアーコンプレッションを高くしないと(エアーの流量が大きくしないと)チャンバーからBB弾が前に行きません。ここで解るのがチャンバー内のエアーコンプレッションを高めるということ(ホップダイアルを強くすると)はBB弾のホップ回転数を高めることとイコールになるということが解ります。
他のホップシステムを例に挙げるとAとBB弾の接地面積を増やす長掛けホップは”エアーコンプレッションが掛かっている時間が長い”のでBB弾の高回転を与えることが出来ますね。
ちょっと話はずれましたがマルイのホップシステムの良い所はここで説明したとおり”チャンバー内コンプレッションをあげすぎない”、、、これに尽きると思います。
”高いチャンバー内コンプレッション=BB弾の高い回転数=重量弾で長射程の実現”
、、、のカスタムでコンプレッションをあげると良いことずくめみたいですが実は落とし穴があります。
”チャンバー内のコンプレッションをあげるとホップシステムのアライメント変化が起きる!”
、、、ということになります。流体力学のお話になりますがエアーはコンプレッションが掛かると流体から固体の性質に変化します。強いコンプレッションのエアーはチャンバー内で一番弱いところに逃げようとする性質があります。それはチャンバー内のどこでしょうか?
それはインナーバレルのホップ窓(とノズルとチャンバーの隙間です)です。
簡単に言うと風船を空気を入れると膨れる原理です、、それがホップ窓におきます。
、、、、ホップ窓にはBB弾の回転方向や接地面積や接地圧力をつかさどるホップリブがあります。まずここに空気が逃げようとして一番最初にゴムであるリブ(正確にはリブの周りのゴムが薄い部分)が歪んでアライメントが狂ってA支点がずれます。
A支点がずれるとBB弾のセンターが保持できずにリニアなBB弾の回転が保てずに弾道が乱れたり飛距離が安定しなくなります(BB弾進行方向のcd値の変化)。
ここで一例を、、、
この現象が顕著に現れるのはマルイのハイサイクルシリーズ銃に強いスプリングを入れるとノーマルよりも弾道が乱れる現象が起きます。
これは上記の理由でスプリングを強くした結果、ピストンスピードがあがりチャンバー内のコンプレッションが高くなった結果、A支点のアライメントの変化が大きくなってしまったのが原因です(稀に綺麗にパッキンを入れ直すと回復することがあります)。
、、、という理由からマルイのホップシステムはそのピストンやスプリングのチューニングの最適化を行い電動ガンの中でももっともチャンバー内のコンプレッションをギリギリ高めないホップシステムを搭載した銃だということが解ります。
詳しい事は割愛しますがマルイのホップシステムはエラストマーの技術的解説から説明するとホップパッキンの体積弾性率、剛性率、ポワゾン比の定数をなるべく変化させないもっとも優れた銃ということが解ります。
秒間25発程度で既存のパッキンでどれだけ命中精度を確保したままコストを抑えられるか?、、を追及するとあのノーマルよりも弱めのスプリング、セクターカット3枚で更にエア容量とチャンバー内エアーコンプレッションを減らしたメカの構成になるんだと思います。
マルイのハイサイクルシリーズでは秒間25発がギリギリ弾道が乱れない妥当なラインのサイクル設定だということが分かりました、、、ではマルイハイサイクルの秒間25発以上のサイクルにして弾道と飛距離を稼いだうえでサイクルアップさせるにはどうしたらよいでしょうか?
ハイサイクルにすればするほど強いスプリング、セクターカット、速いピストンスピードが必要になります、、必然的にチャンバー内のコンプレッショは高まってしまいますね!
ではサイクルアップに必要なカスタムが実際にどのように流体力学的に影響されるか簡単にご説明すると、、、
①強いスプリング、、、、ピストンスピードを稼ぐ、初速を稼ぐ→ノーマルよりも速くチャンバー内にノーマルよりも大きなエアーコンプレッションがかかる→画像A地点のアライメント変化が大きくなる→リブがセンターに来ないから弾道が乱れる
②セクターカット、、、、エア容量減少で一瞬でチャンバーにノーマルよりも大きなエアーコンプレッションがかかる→リブはゴムなので速く膨張すると熱を持つ&速い剛性率とポワゾン比の変化はノーマルよりもリブのアライメント変化が大きくなる→リブがセンターに来ないから弾道が乱れる
③ハイサイになればなるほどリブのアライメント変化が起きて膨張したリブのゴムが元の形に戻る時間(押しゴムが元に戻る時間も含む)よりもBB弾がチャンバーに装填される時間のほうが速くなりリブのバウンド(チャタリングといったほうが良いかもです)が収まらずにホップのかかりが不安定になるから弾道が乱れる。またBB弾がインナーバレルを通過する時に起こる負圧がチャタリングの原因になったりもします。特に硬度が低いパッキンはこの傾向が高いです(注1)
(注1)
チャタリングは電気的なスイッチでは実際にモニターで確認ができます。オシロスコープでVCCとアース間でμsecくらいで確認可能です。エラストマーや金属のマテリアルのチャタリングをモニターするとなると他の計測方法としてはマイクで周波数を計測する方法しか思い浮かびません(無音室がいるんで大掛かりです)。
車やバイクが詳しい人ならば2ストエンジンのリードバルブやバイクのステアリング、、フルカウルバイクのチャタリングのほうがしっくりくるかもしれません。
、、、となります。流体理学的に物質に実際にエアーが与える影響を考察するとハイサイクルにすればするほど初速が安定しなかったり初速は出てるのに飛距離が出なかったり派手に弾道が乱れたり(フルオートなど)するには上記の事が原因かと当工房では考えています(実際に実験をして確認しています)。
、、ではどうしたらハイサイでも命中精度を上げたり飛距離を伸ばしたりできるのか?
実はハイサイで上記の不具合が出ている個所はローサイクルで命中精度が良い銃でも発生しています。要はハイサイだとローサイクル銃よりもエアーが与えるアライメント変化が顕著に出ているだけです(強いピストン打撃による銃自体のアライメント変化も影響があります、、、がこの考察はまた今度)。
ちなみにこの特性を良く理解した上で逆の発想で命中精度と飛距離と耐久性を上げた銃が次世代シリーズです(リコイルオミットでもっと高性能)。
もっと構造的に単純にして命中精度を上げたものがVSRなどのエアコッキングスナイパーライフルかと思います。
シリンダー容量を究極に減らして上でボア&ストロークを考察して飛距離と連射時の集弾性を究極に狙った銃がコンパクト電動ガンや電動ハンドガン、AA-12などの電動ショットガンです。
マルイ様の銃の構造は非常に勉強するところが多いですね。
、、と話はずれましたがハイサイ銃でも命中精度や飛距離を伸ばす方法はというとまず第一に、、、
”エラストマーの品質を上げる!!”
、、、基本はこれだと思います。
具体的に言うと、、、
”体積弾性率、剛性率、ポワゾン比の値を良好にする(具体的の数値は言えません、、知的座財産に触れます)”
、、、となります。
多分、普通の人はさっぱり分からないと思います。
実はゴムなどのマテリアルは日々進化しています。
一番進化が早いところで医療機器で感じることができます。
エラストマーの技術で世界最先端というと今のところはドイツと日本かな?、、と感じます。
皆さんが日常で感じられるエラストマーの進化は主にソフトコンタクトレンズで体感出るんじゃないでしょうか?
10年前のコンタクトレンズと今のコンタクトレンズ付け心地、、、全然違いますよね?
パッキンに使われるエラストマーの技術の分野は違いますが(シリコンパッキンなら共通点が少しあります)技術の進化は同じようにパッキンの素材の品質でも体感できます。
電動ガンのパッキンはおもちゃ用のエラストマーの技術で作られていますがこれを医療用の最新技術で作ったらどうなるでしょうか?
マルイ様パッキンですと今の1J規制ではこのままの品質でもかなり優秀かと思いますがこれを最新の医療技術と一緒(ホスピタルグレードと言います)の品質で作るとどうなるか?
、、、、今日はここまで(疲れたのでw)!
次回はまた、なんとなくホップシステムの解説その2でも書こうかと思います。
生暖かくお持ちください!