システマ A TO Z モーター検証
今更ながらシステマのA TO Zモーターの検証です。
当工房のお客様からご提供いただきました。僕は前から気になっていたモーターです。
このモーターは何十年も前に販売されたモーターですが当時のシステマの技術力が詰まったマーターなんじゃないかと思っておりまして是非とも分解してみようかと思っていました。
これは当時発売されていたマグナムモーターの出来が良すぎたのでこのモーターも良い出来では?、、、思い立ったのが事の発端です、、、ちなみに某世界的に有名な日本のモーターメーカーの技術者の後輩も協力してくれるとの事ですので個人では出来ない非常に細かい詳細なデータが取れます。期待が膨らみますね、、。
まずはエンドベルの説明です。
アルミヒートシンクです。アルミヒートシンクは非常に高価で扱いにくいエンドベルですが放熱効果が高くモーターの高負荷時でもオーバーヒートを防ぎます。
この時代のカスタムはニッカドやニッケル水素の12セルのバッテリー、しかも凄い強いスプリング(ネットなのでスプリングの強さは明記しません)で凄いカスタムをしていたと聞きました。その今では考えられないモーターの高負荷に対応できるように、、、ありえない強スプリングを引けるように開発されたのがこのモーターだと思います。
今の時代のようにリポバッテリーがある時代ではないのでセミ発射時の電圧降下が抑えられないニッカドやニッケル水素ではセル数を増やして1セル当たりの電圧降下を防いでいたんでしょうね、、。そうした結果が12セルと数の多い組電池が当時似合ったのかもしれないです。
それでは早速分解していきます。
ポリカネジを外してまずはコミュのチェックです。かなりの高電圧をかけた後がありますね、、。コミュの焼けがまだらです。シムは二つで絶縁シムは一個、、品質はよいと思います。
PEW線のカシメは接点の締め付けトルクも程よいですね、、ハンダも薄く乗ってます。
ポッティングは二箇所、量は普通ですが詰め方は中華と違って丁寧です。多分ですが外れないと思います。モーター缶の設計は2ピースで非常に剛性が高くこの構造なのにエンドベルもピタッと嵌ります。、、、、製法やマテリアル強度、精度、、、ものすごいオーバースペックのような気がします。
またエンドベル固定用のネジの受けのフレームメンバーもついています、、。今の高級中華モーターにもこの構造が採用されています。電動ガンでこの構造はシステマが元祖なんじゃないでしょうか?
コミュテーターのギャップです。クリアランスはちょっと広めですね。
シャフトのセンターもきっちりと出ています。
エンドベルです。ブラシが削れて沢山エンドベル内面に付いています。削れたカスを調べて見ると粒が粗く大きいです。
粒が炭化していません。これは推測するにブラシが柔らかくトリガースプリングのテンションが強い傾向にあるセッティングだと思います。
ブラシの耐久性は無視して大電流を流すことに特化したセッティングだと思います。
極端に高負荷のカスタムではモーターの負担が凄く掛かります。ブラシモーターの電動ガンにおけるオーバーヒートの順番として先にまずはコミュに非常に高い熱が発生します。
その熱がシャフトからエンドベルの軸受けに伝わります。プラ製のエンドベルですとその熱でエンドベルが溶けます(普通のノーマルカスタムでは溶けないです)。
溶けると軸受けが微妙にセンターからずれてモーターの回転負荷が強くなりモーター全体に負荷が掛かって壊れます。
ですがアルミエンドベルはプラ製エンドベルと違い溶けないですしアルミは放熱性が高いので熱に対する耐性がが高いです。
なんだかアルミエンドベルは良いことずくめみたいですがしっかりとデメリットもあるんですよね、、。
現時点での電動ガンカスタムモーター市場は非常にアルミエンドベルのモーターは少ないのが以下の理由からだと推測されます。
①高価、、、、当たり前ですが放熱性の高いアルミを削り出して制作するのでコストがかかる。
②モーター缶のコスト、、、アルミはプラと違って固いのでモーター缶も精度が良く、ある程度固い材質で作らないとシャフトのセンターが取れません。また強いトルクがかかるとエンドベルを中心に強い捩じりの負荷がモーター全体に掛かりますから缶もそれなりの剛性が要求されます。
プラのエンドベルはある程度の軟質のプラスティックで作られているので上手くエンドベル自体がしなって(変形して)モーター缶を守ると思います。
③オーバーホールするには技術がいる、、、、このモーターはアルミエンドベルなのでこのベル自体が通電します。
なので絶縁しないといけないですからエンドベルを缶と固定するネジは非通電素材のポリカネジで締めます。またファンストン端子のオスパーツの絶縁もシビアになってきます。エンドベル側の絶縁シムもモーターの知識がないと即ショートします、、ですので素人さんには非常に扱いが難しいモーターだと思います。ちょっと分解&清掃したら壊れた、、っこともあるやもしれないですね、、。
、、という懸念があるのでそんなに普及はしないのかな?、、。自分的にはたくさん作って欲しいモーターですがグリップ調整やエンドベルの加工ができないとギアノイズに悩まされる扱いにくいモーターになってしまうやもですね。
次にモーター缶の説明です。
先ほどと同じ画像です恐縮ですが缶に注目!。
非常に肉厚で2ピース構造になってますね。通常のモーター缶がプレスで簡単に作られてますがこのモーター缶は剛性と精度を出すために二つの缶のパーツをカシメていると思います。非常にコストと労力がかかった缶です。ここにシステマさんの拘りと意地を感じますね。
ブラシです。スタンドアップ型で確か5mm×4mmだったと思います。
ブラシの削れ方を注視してみると片減りしていますね、、、これは非常に高い電圧で回したのか、、、それともブラシスプリングが固くてコミュのギャップに当たるブラシ接地面積部分が強く当たってしまい片減りしてしまったのかもしれないです。
スタンドアップ型のブラシの特徴はレイダウン型と違って進角を調整した時に起こるショートが無いので熱を帯びにくいのが特徴です、、、でも高回転時のトルクは細くなるんで高レートのスプリングではサイクルが出にくいです(グロス値ではレイダウン型とは差は出ないです)。
ラグ付きのブラシです。問答無用でコミュに大電流を流せるようにラグがついています。
そういえばロネックスのモーターもラグ付きブラシです。ロネックスは良くシステマのモーターを研究していますね。
ブラシスプリングです。
非常に硬い、、。ラグ付きブラシと併用で究極に高回転時でも高電圧バッテリー繋いでもなんでもコミュに大電流を流してやろうという設計です。
、、、という感じで簡単ではありますがシステマの意地とプライドをかけたA TO Zモーターの解説を終わります。
これらの検証から解るように今の電動ガン業界ではちょっと考えられないようなコストと開発費をかけて作られたモーターをなんと破格の1万円くらいで作ってしまったのだと思われます。
かなり前の時代、、まだ電動ガン業界ではろくにカスタムパーツが出ていないと時に突然世に出た高性能すぎるモーターと推測されます。
完全にバッテリー、電装系、駆動系のパーツの事を全く考えていないモーターで誰も扱えなかったんじゃないでしょうか?。
唯一バッテリーだけはちょっと知識のあるカスタム好きの人ならばニッカドやニッ水で組電池を作って運用していたと聞きました。
今あるリポだと3セルからこのモーターは真価を発揮すると思います。ニッカドやニッ水でも12セルくらいで組電池を作るとリポ3セルと違ってセル数は4倍ですから(ザップド必須)電圧降下はリポよりも下がりません、、、ですのでえげつない電量が高負荷時がこのモーターに流れます。昔のカスタム好きの方はどういったカスタムでこのモーターを使っていたんでしょうかね?
今はどうかは知らないのですが昔のシステマさんはかなりの性能のブラシモーターを開発する技術があったと思います。
ですが時代のニーズに合ったカスタムパーツが作れていたのかというと少々疑問が残ります。僕がシステマの技術開発部長だったならばこのモーターの企画段階でストップをかけると思います。、、ですがシステマの高い技術力をカスタム業界内外に示すのが目的だったのならば成功だったのではないでしょうか?。
皆さんももしもヤフオクやVショーでこのモーターを見かけたらならば是非とも買ってみてください!、、でも絶対にFCUに繋げて使ってはダメですよ~!
それではまた!